「お客様と楽しい時間を共有する」。カンボジア人ガイドから学んだ、接客業の素晴らしさ

こんにちは。現役接客業ブロガーの貫洞(かんどう)です。わたしはかれこれ15年以上、接客業をしています。接客業以外に製造業、事務、営業の仕事を経験していますが、接客業がいちばん自分に向いていると思ったので、今は接客業を生業にしています。営業の仕事もするけれど、メインの仕事は携帯ショップの接客業です。

さて、接客業というと、店員が土下座をさせられたとか、クレーム対応が大変だとか、ネガティブなイメージが強いように思います。わたしも接客業を「きついけどやりがいのある仕事」だと公言していました。しかし、少し視点を変えてみようかなと思える出来事が連続して起こりました。今日はそのことを書きます。

「わたし、接客大好きなんですよ」と言った二十歳の女性

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最近、あるイベントにキャンペーンガールとして来ていた二十歳の女性と出会いました。携帯ショップのイベントなので、彼女の仕事は抽選会での応対や、簡単な商品説明です。わたしは販売員なので深く接客や案内をするけれど、キャンペーンガールは通常そこまで深く接客はしません。しかし、彼女はほんとうによく目端の利く方でした。

泣いてしまった子供がいたら、自分の持ち場を見ながら子供をあやす。荷物の多いお客様がいたら一緒に持ってあげる。話好きなお客様がいたら、自分の持ち場をしっかりこなしつつ、世間話をする。常にニコニコしていました。「仕事のできる人だなあ」とほれぼれしました。その彼女と休憩時間が一緒になり、少し話をしていました。彼女の仕事ぶりをほめると、彼女はこんなことを言いました。

「わたし、接客が大好きなんですよ。楽しい」

わたしが二十歳のころは、ほかに仕事がないからとか、資格がなくてもできる仕事だからというネガティブな理由で仕事を選んでいました。工場のアルバイトに居酒屋、なんでもやりましたが、時給が変わらないのなら工場のほうが気を使わなくて楽だ。接客は人に合わせなければいけないので時給に見合わない。そんなふうに思い、接客業を避けていました。

その後も、時給や歩合給が高いという理由で営業や接客の仕事をしましたが、彼女のように前向きに思ったことはありません。稼げるかどうか。常にそれだけの基準で仕事を選んできました。

わたしは自分と彼女の違いに愕然としつつも、目の前の仕事に一生懸命に仕事をこなしました。わたしには、彼女のような接客はできません。自然とにじみ出る優しさや親切は、仕事と割り切っているわたしにはどうしても出せないのです。仕事は通常通りにやっていましたが、心の中でそのことがずっと引っかかっていました。

カンボジアで出会った日本語ガイドをする青年

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そのことが心の中に引っかかったまま、先日カンボジアへ旅行してきました。そこで、日本語が話せるカンボジア人のガイドさんと出会いました。彼は二十代半ばの素朴な青年で、自分のことを「まだ新人です」と言っていました。確かに、日本語の用法がたまに間違っているし、ベテランのガイドさんより声が小さい。でも、なぜか彼に対してネガティブなイメージをまったく持ちませんでした。終始ニコニコとしており、自分のことも隠さずに話してくれ、ガイドも自分の言葉で考えながら言ってくれていたからです。

ニコニコしながら振り返ってわたしたちに微笑みかけ、「楽しいね!」と語りかけてくる。「楽しんでいますか?」という“仕事”の顔ではなく、「楽しいね!」という“友達”の顔でした。おかげで、まるで友達に案内されているような気持ちになったのです。

彼は時折自分のことも話してくれました。

「私は、日本語学校で成績良くなかったです。先生は厳しくて、いっぱい怒られました。ガイドの仕事ができるようになって、本当に、うれしいです」

彼にはアンコールワットの遺跡を案内してもらったのですが、思っていた以上に面白かったです。素朴な雰囲気で、けして要領のいいタイプではないのだけれど、彼の説明を聞いているとなんでも楽しくなる。暑くても疲れても、ちょっと段取りが悪くても、マイペースで一生懸命にガイドをする彼を応援したくなりました。

丸一日のガイドが終盤にさしかかるころ、彼はこんなことを話してくれました。

「私の夢は、日本語のガイドになることでした。とても小さいころ、日本人のお客さんに、日本語で遺跡をガイドしている姿を見て、自分もなりたい、かっこいい、そう思いました。今は夢がかなって、とても幸せです。まだまだ先輩たちの仕事、覚えることたくさんあります。ずっと、この仕事を頑張ります」

その笑顔は、その日見たどの景色よりも印象に残りました。

ガイドの仕事をしていたら、お客さんとの相性が合わないこともあるだろうし、うまくいかないことだってあるでしょう。実際、途中で土産物屋に寄って買い物を促す場面もありました。これ、日本の販売接客と同じです。購入を勧めなければならないんです。しかしその時も、彼は彼らしい説明をしました。

「これから案内するお土産物屋さんは、ほかのお店より、少し高いです。でも、質が良いです。安心して食べる、使う、できます。大切な人に渡すおみやげに、少しだけでいいので、買ってもらえたらうれしいです」

わたしは「素晴らしい!」と声をあげてしまいました。もしも彼が「ほかのお店より安いです。ここの〇〇はここにしかありません」なんて白々しいことを言ったら、わたしは土産物屋に入ることすら嫌になったと思います。けれど彼は、自分の言葉でわたしに「ひとつだけ買おうかな」と思わせました。彼の接客が、わたしの心に響いたのです。

あこがれて仕事に就いた人は強い

カンボジアにて。右が筆者です。

アンコールワット前にて。右が筆者です。

接客業はとても難しく、パーフェクトな接客などありません。その中でわたしは、なるべくお客様を怒らせずに、商品に興味をもってもらえる接客を日々研鑽しています。しかし、接客が好きだと言い切ったキャンペーンスタッフの女性や、カンボジアのガイドの青年は、接客を研鑽しようとか、あえて意識していないと思います。自分が楽しくて、もっとできることはないかと自然に考えています。

根底にあるのは「あこがれ」と「楽しさ」です。シンプルでとても強い感情です。

仕事に就く理由は人それぞれで、中にはわたしのように「この仕事が一番稼げるから」という動機の人もいるでしょう。それ自体は決して悪いことではありません。でも、わたしはもう少しだけ輝いてみたいと思いました。

これからの未来、誰か一人でも「わたしの接客」にあこがれて接客業に就いてくれる人がいたら、接客業の未来は明るくなります。ポジティブな理由で接客業を選ぶ人を増やすことも、わたしたちの大事な仕事です。

では、「お客様にあこがれられる接客」とは何か。それは恥ずかしいセリフを言うことでも、先回りして相手の求めるものを出す計算をすることでもありません。お客様と一緒に、「楽しい時間」「楽しい気持ち」を共有することです。

あなたが接客業をしているのであれば、世の中が少し明るくなるような、そんな接客をしてほしい。誰かがあなたの接客にあこがれて未来の接客業を夢見て、そのあこがれが遠い未来へと続いていく、そんな循環が目に見えない幸せな連鎖を産んでくれたら、世界は今より少し幸せになるでしょう。

わたしも日々の接客業に力を入れます。輝けるようにがんばります。遠い空の下、今日も目を輝かせてガイドの仕事をしているあの青年に負けないように。

筆者:貫洞沙織(かんどう・さおり)
ケイ・ソリューションズ株式会社 代表
接客業歴15年以上
ブログ:接客業はつらいよ! かんどーの毎日更新日記! 「接客・店舗運営」

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